自律神経のバランスがいい状態とは?
交感神経と副交感神経の分業体制で健康が保たれる
自律神経は天気や気温などの自然環境や、人間関係の悩みや仕事上のあつれきなど、外部からのストレスに反応しています。
それらに負けないように、さまざまな生理現象をいつもベストな状態に保てるよう調整してくれているのです。
365日、24時間休まず働き続けるのはかなりの重労働。
そのため自律神経は、交感神経と副交感神経という正反対の働きをする2つの神経が役割分担をして、交互に働くようになっているのです。
交感神経が働くのは、体を動かす活動的なときや興奮した時。
交感神経が働くと細胞や臓器が興奮し、緊張します。
副交感神経が働くのは、体を休めるときやリラックスしたとき。
副交感神経が働くと細胞や臓器がリラックスします。
私たちが仕事をしている時や活動している昼間の時間帯、目を覚まし活動の時間帯に入る起床時は交感神経が中心になって働くわけです。
この状態を「交感神経が優位になる」といいます。
一方、リラックスしているときや就寝中は、副交感神経が中心になって働いていて、この状態を「副交感神経が優位になる」といいます。
この副交感神経が優位になる状態が「心と体の健康」を保つキーワードなのです。
なお、交感神経と副交感神経が正反対の働きをするといっても、両者は敵対する関係ではありません。
交感神経が頑張るときは副交感神経が休み、副交感神経が頑張るときは交感神経が休むという、「分業体制」で働いているのです。
交感神経が優位になると体温が下がり、血圧が上昇、呼吸は浅くなり、心拍が速くなり、血流が悪くなってしまいます。
これらはどう考えても、体にとってはマイナスのことです。
一方の副交感神経が優位になると、体温が上がり、血圧が低下し、呼吸は深くなり、心拍は緩やかになり、血流が促進されます。
つまり、体にとってはプラスのことがおきるのです。
ここから、交感神経が優位な状態が長く続くと体調不良や病気に繋がりやすく、副交感神経が優位になることで健康が保たれる、というひとつの結論が導き出されます。
もちろん、働く時や活動するときは、交感神経が優位でなければやる気も馬力も生まれません。
すべてにおいて副交感神経さえ優位にしておけばいいというわけではありません。
あくまでも、健康維持には、交感神経と副交感神経の分業バランスがよく行われることが大切なのです。
自律神経のバランスがいい状態とは?
交感神経と副交感神経は、敵対する関係ではなく、分業して働いているといいました。
そのため、一方が活発に働いて優位になるときは、必ずもう一方の働きが抑えられるのです。
シーソーをイメージしてみてください。
例えば、シーソーの両端に交感神経と副交感神経がついているとしましょう。
シーソーは片方が上がるともう片方は下がるようになっています。
ストレスや疲れなど、体にとってつらいことが続くと交感神経が反応して優位に働く為、シーソーの交感神経の方が下がり、全体のバランスが崩れてしまいます。
ここで大切なことは、シーソーのバランスが崩れたままにならない点。
交感神経が過剰に優位になると、副交感神経が頑張って働き、交感神経をもとのレベルまで戻そうとするのです。
つまり、交感神経が優位になってくると、自動的に副交感神経が守りの体制に入るわけです。
こうすることで優位になった交感神経をちょうどいいバランスのところまで戻します。
こうした副交感神経が行う「守りの働き」が維持できているのが「自律神経のバランスがいい状態」で、なんらかの理由でこの働きが維持できなくなるのが「自律神経のバランスが崩れた状態」なのです。
また、自律神経のバランスが大きく崩れて、交感神経が優位になりすぎた状態が続くことを「交感神経の緊張」と呼びます。
交感神経の緊張が化膿性の炎症や組織破壊などをもたらし、がんや生活習慣病を引き起こす原因にもなるのです。
一方で、副交感神経が優位になりすぎても、自律神経のバランスを崩れます。
副交感神経が優位になり過ぎるのは、交感神経の緊張に対して副交感神経が過剰な反応を起こすときで、これを「副交感神経の過剰反応」と呼びます。
副交感神経の過剰反応は倦怠感や無気力感、アレルギー疾患や浮腫などを引き起こします。
自律神経が「免疫力」の強さを決めている
風邪をひいたときには「とにかくゆっくり寝て、体を休めてね」と周囲から言われたことがあると思います。
寝込むわけにはいかないと、そのまま休まないで働き続けると、ほとんどの場合は風邪をこじらせてしまいます。
このように「休まない」「寝ない」と病気が治らない理由は、いったいどこにあるのでしょう。
その答えを出す前に「免疫力についてお話していきたいと思います」
「免疫力」とは
免疫力とは、私たちの体を病気から守るために温在する大切な防御システムです。
その重責を果たしているのが血液中の「白血球」です。
血液の中身は細胞(血球)と血しょう成分で構成されていて、液体の血しょうの中に赤血球、血小板、そしてこの白血球が浮いています。
それぞれの成分に役割があり、赤血球は血液に酸素を運び、血小板は傷口ができたときに血液を固める働きをしているわけです。
白血球は、血流にのって全身を巡回しながら、体の中に侵入する異物を飲み込み、異常細胞を処理して病気から身体を守る「免疫活動」を行っています。
免疫活動を行うのが、白血球の免疫細胞の「マクロファージ」「顆粒球」「リンパ球」です。
白血球内のマクロファージは全体の5%とわずかで、顆粒球が55~60%、リンパ球が35~40%を占めています。
そもそも顆粒球とリンパ球は、体のコントロールをより精密に行うために、原始細胞であるマクロファージから進化してできた細胞です。
顆粒球がマクロファージの「異物を食べる能力」を引き継ぎ、リンパ球がマクロファージの「食べた異物を処理する能力」を引き継いで、主な免疫活動を行っています。
この二大免疫細胞の顆粒球とリンパ球の働きを、自律神経がコントロールしているのです。
もっと言えば、自律神経が白血球を支配して、免役力の「強い、弱い」を決めているのです。
この自律神経と白血球の関係を近年の研究で明らかにしたのが、福田稔先生と安保徹先生の「自律神経の白血球支配の法則」です。
この法則の発見によって、体の抵抗力や自然治癒力が体質ではなく、自律神経の働きによってもたらされることが明らかになりました。
つまり自律神経にアプローチして免疫力を高める新しい方法論が生まれたのです。