睡眠不足は万病のもと
肥満や生活習慣病、がんの発症リスクを高める
質の悪い睡眠や慢性的な睡眠不足は、日中の眠気や判断力の低下だけでなく、免疫力を下げ、ホルモン分泌や自律神経に悪影響を与えます。
たとえば、食欲にかかわるホルモン分泌に異常をきたすと太りやすくなり、悪化すると、糖尿病や高血圧などの生活習慣病を引き起こします。
心筋梗塞や脳血管疾患、がんの発症リスクも高まります。
そのほかに、うつ病など精神疾患のリスクを高めることもわかっています。
また、日本では働く人の3割近くが交代勤務に従事していると言われています。
不規則な勤務形態では、睡眠も乱れやすくなります。
そうした状況を少しでも改善しようと、体内時計を同調させやすいシフトを組む業態もみられます。
体内時計は、後ろにずらす方が合わせやすいのがポイントです。
たとえば、看護職のような3交代制の業態で、「日勤→順や筋→夜勤」の順で数日間ずつ後ろにずれるシフトを組む方法です。
ランダムなシフトより、体への負担が軽くなります。
もちろん、同調のしやすさには個人差があり、誰でもうまくいくとは限りません。
本来、職種によって睡眠に差がでてはならないはずです。
どんな仕事も、十分な睡眠が確保される働き方が求められます。
睡眠不足でネガティブな感情に過剰反応する
人は睡眠不足が続くとイライラして怒りっぽくなってしまいます。
睡眠不足はイライラを増やしてハッピーを消すといってもいいでしょう。
20代の健康な若者を対象に、「8時間睡眠を5日間つづけたあと」と、「4時間睡眠を5日間つづけたあと」で、さまざまな表情の人の画像を見せて脳活動の様子を調べました。
すると、睡眠時間が短いと、恐怖や怒りなど不快な表情を見たときに、気分を悪くしたり、不安になったりしやすいことがわかりました。
脳には、感情が爆走しないようにブレーキをかける、前帯状皮質と偏桃体があります。
しかし、睡眠不足の状態では、それらのブレーキがかかりにくくなりことが明らかになったのです。
周囲の人のちょっとした言動がやたらと気に障ってイライラしてしまうときは、睡眠が足りていないからかもしれません。
眠りの借金には気づけない
専門家の間では、睡眠不足を「睡眠負債」と表現します。
「睡眠不足が」積み重なって「睡眠負債」となります。
「人間は一定の睡眠時間を必要としており、それより睡眠時間が短ければ、足りない分が蓄積する。つまり、眠りの借金が生じる」
これはあえて「負債」と表現することで、すぐにでも補えるイメージの「不足」とはちがい、気づかないうちにどんどん膨れ上がってしまうことを強調し、警告しているのです。
睡眠負債についてはこんな実験報告もあります。
実験によると「6時間睡眠を続けると、10日で集中力や注意力が1日徹夜した時とほぼ同じになり、4時間睡眠の場合は、2週間で3日間徹夜した時とほぼ同じレベルまで衰える」とわかったのです。
しかも、徹夜後なら疲れや眠気でパフォーマンスの低下を自覚できますが、4時間・6時間睡眠のグループは脳の働きの衰えを必ずしも自覚できていません。
小さな睡眠不足が積み重なり、いつしか大きな「睡眠負債」におちいっていったのです。
気づかない事こそが睡眠負債の恐ろしさです。