「睡眠」の役割とは?
目次
脳をしっかり休ませ、体をメンテナンスする!
上質な睡眠を手に入れるには正しい睡眠を習慣化することが大切です。
そもそも人はなぜ眠るのでしょうか?
ラットを用いた断眠実験を行うと、1週間を過ぎた頃には、毛が抜け、体温が下がり、やがて感染症をはっしょうするなどして死んでしまいます。
人間の場合、すぐに死ぬことはありませんが、十分な睡眠をとらないと、判断力が低下し、体調も悪化してしまいます。
睡眠は健康に生きるために欠かせないものです。
とくに大きな仕事(役割)を5つ担っています。
1 脳をしっかり休ませ、体をメンテナンスする。
2 自律神経やホルモンバランスを整える。
3 記憶を整理して定着させる。
4 免疫力を上げて抵抗力を高める。
5 脳の老廃物を除去する。
1 脳をしっかり休ませ、体をメンテナンスする。
かつては「睡眠=単なる休息」と考えられていました。
しかし、脳活動が活発なレム睡眠があるとわかってからは、眠っている間ずっと「完全な電源オフ」の状態になるのではなく、何かあればすぐに起動できる「アイドリングモード」があると考えられるようになりました。
脳は、深いノンレム睡眠の時のみ休んでいるのです。
2自律神経やホルモンバランスを整える。
実は眠りが自律神経をリラックスモードに変えているのです。
自律神経は、心臓をはじめとする内臓の働きや体温、代謝などの調節を24時間休むことなく行っています。
交感神経と副交感神経があり、1日のなかで時間帯や活動状況によって、どちらか一方が30%ほど優位に働きます。
交感神経が優位になると、血圧が上がり、筋肉や心臓の働きも活発になるため、脳も体もアクティブな興奮状態になります。
一方、副交感神経が優位になると、血圧が下がり、心臓の働きや呼吸も穏やかになります。
健康な状態であれば、日中は活動モードの交感神経が優位となり、食後や睡眠中はリラックスモードの副交感神経優位に自然に切り替わります。
ところが、現代人のライフスタイルは、緊張やストレスから交感神経優位の状態がずっとつづきがちで、脳も体も疲れやすくなっています。
睡眠は活発な状態の交感神経を弱めて、副交感神経を優位にする役割を担っているので、その機能をうまく生かしたいところです。
睡眠はホルモンとの関係も密接です。
代謝や体の成長を促す成長ホルモン(グロースホルモン)は入眠直後の深いノンレム睡眠で分泌が活発になります。
生殖や母性行動に関わるプロラクチンは、入眠直後から分泌が始まり、睡眠の後半に増加します。
正しい睡眠が正しいホルモンバランスを導くのです。
成長ホルモンがでないと・・
・コレステロールが増える
・骨が弱くなり、折れやすくなる
・筋肉量が減る
・体力が落ちる
・肌が荒れる
などの健康リスクが高まります!
寝る時間を一定にするのがポイントです!
3記憶を整理して定着させる。
深いノンレム睡眠やレム睡眠がいやな記憶を消してくれる
脳には日々膨大な量の情報が入ってきます。
すべてを記憶することは不可能なので、覚えておくことと忘れることを区別して、必要とした情報のみを「記憶」として残します。
記憶にはいろいろな過程があり、どの睡眠の段階も記憶の定着や消去に関わっています。
新しい記憶は脳の海馬という部分に一度入って整理され、大脳皮質という部分で古い記憶となり固定されます。
海馬から大脳皮質への情報の伝達は、眠り始めの深いノンレム睡眠ときに行われます。
自転車の乗り方やスポーツ技術の習得など体で覚える記憶(手続き記憶)は、浅いノンレム睡眠で定着します。
一方、レム睡眠のときには、経験したことをかつての記憶と関連づけたり、いつでもスムーズに記憶が引き出せるように紐づけたりと、記憶を整理していると考えられています。
また、ネガティブな感情にとらわれないためにも、忘れることは重要です。
記憶の消去が行われるのも最初の深いノンレム睡眠のときとされていますが、最近の研究でレム睡眠も関わっていることがわかりました。
このように、記憶の整理と定着には、睡眠すべての段階が必要なのです。
試験勉強やスポーツ練習のあとは、とくにしっかり眠って、脳のもつ記憶の働きを助けましょう。
4免疫力を上げて抵抗力を高める。
サイトカインという生理活性物質が体を休ませる指令を出す
短い断眠は交感神経を活発にし、免疫力を上げるという報告もあります。
ですが、睡眠不足による免疫力の低下は明らかです。
免役はホルモンと連動しているので、睡眠不足などでホルモンバランスがくずれると、正常に機能しなくなります。
とくに、代謝に関わる成長ホルモン(グロースホルモン)は、最初のノンレム睡眠が現れないと分泌が激減し、傷ついた細胞の修復に差し支えます。
結果、免疫力が低下し、菌やウイルスが侵入しやすくなってしまうのです。
風邪やインフルエンザにかかると、熱が上がって苦しくなり、とても眠くなります。
これは免疫が正しく機能している証です。
ウイルスが体内に侵入すると、その情報を受け取った免疫細胞が、別の免疫細胞にサイトカインという生理活性物質の一種を出して指令します。
すると、指令を受けた細胞が、ウイルスに感染した細胞への攻撃をはじめます。
このときサイトカインは、免役細胞が十分に機能してウイルスと闘えるよう、体温を上げ、体を休めるなどといった指令も出してサポートしています。
そのため熱が出たり、眠くなったりするのです。
免役が正しく機能するよう、適切な睡眠で体を整えておくことも大切なのです。
5脳の老廃物を除去する
人の体を構成する37兆個もの細胞はそれぞれ代謝を行い、それにともなって老廃物が生じます。
老廃物はリンパ組織などを摂宇して、細胞外へ排出されます。
脳の重さは成人で約1200~1400グラムと、体重のたった2%程度にもかかわらず、ほぼ休みなく活動するため、体全体の約18%ものエネルギーを消費していると言われています。
代謝が活発に行われると、そのぶん老廃物も多く生じます。
ところが、脳にはリンパ組織がありません。
その代わりに脳の老廃物は脳内をめぐる脳せき髄液という液体で、洗い流されています。
この働きを、グリンパティックシステムといいます。
老廃物の除去はおもに睡眠中に行われているため、睡眠不足が続くと老廃物の処理が十分にできなくなり、蓄積されてしまいます。
なかでも、使い終わったたんぱく質(アミロイドβ前駆体)の代謝によって生じる老廃物、アミロイドβがたまると、脳に老人斑というシミをつくり、アルツハイマー型認知症の原因となると考えられています。
アミロイドβの蓄積は高齢になってからではなく、認知症発症の20年も前からはじまるといわれます。
若い頃からたまった睡眠不足が認知症に影響すると考えられるのです。
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