気持ち良い目覚めのために

覚醒には深部体温と皮膚温度の差を広げるのがカギ
眠りにつくと、筋活動が低下し、代謝も落ちるので、深部体温は更に下がります。
睡眠中、体内の熱は体外へ放たれ、深部体温は低い状態で保たれます。
明け方に近づくにつれて、深部体温が上がっていき、覚醒が始まります。
日中、体が活動モードにあるとき、深部体温は高く、皮膚温度との差は広がっています。
起床すると、深部体温は自然に上がりますが、目が覚めたらすぐにベッドから出て朝の支度を始めるなど、すぐに行動を開始すると覚醒スイッチははっきりとオンに切り替わり、深部体温をさらに上げられます。
また、深部体温と皮膚温度の差が縮まると眠気が強くなる性質を逆手にとって、深部体温と皮膚体温の差を広げることが出来れば、眠気が消えてより早く脳が目覚めます。
たとえば冷たい水で顔や手を洗えば、刺激を与えるとともに皮膚温度を下げられるので有効です。
一方、朝風呂は要注意です。
入浴すると深部体温はたしかに上がりますが、その反動でしばらくすると体温が大きく下がり、かえって眠くなってしまいます。
朝の覚醒には、シャワーの方がいいでしょう。シャワーでスッキリさせることは、目覚めによい習慣といえます。

朝の覚醒を高める方法
・お湯を使わず、水で手や顔を洗う
・冷たい水で水仕事をする
・朝ご飯を食べる
・あたたかい飲み物を飲む
感覚刺激は最高の目覚まし
目覚ましなどで無理やり起こされると、いつまでも頭がぼんやりして、眠気やだるさが消えない事があります。
このようになかなか覚醒状態に切り替わらない状態を「睡眠慣性」や「睡眠酩酊」と呼びます。
これは起きるタイミングが悪いことがおもな要因と考えられます。
そもそも寝起きの認知機能は1日のなかでもっとも低く、活動中のピーク時と比べると6割程度です。
このときの脳波を測定すると、目は開いていても脳は睡眠中とほとんど同じような状態となっています。
覚醒にかかわわる部位として知られているのが脳幹の上行性網様体で、救急車やサイレンの音や明かりをつけたときに起きてしまうのはここが刺激されて覚醒させられたためと考えられています。
この性質を利用して、朝起きたらすぐ目や耳、あるいは皮膚などから上行性網様体に感覚刺激を届けましょう。
しっかりと目覚められるはずです。

よく噛むことで昼夜のメリハリがつく
よく噛んで朝食をとることも、覚醒によい効果があります。
本来なら内臓がよく働くように、朝食前にシャワーを浴びて、体を完全に目覚めさせた方がよいでしょう。
ただし、先に朝食をとってもエネルギーが補給されて体が温まり、覚醒が促されます。
覚醒という視点で注目したいのは、噛むことです。
実験でもエサを噛んで食べるマウスには睡眠や行動にメリハリがあることがわかり、噛まずに食べたマウスは昼夜のメリハリがなくなり、覚醒時の活動量が減ってしまったのです。
よく噛むことで咀嚼筋を支配する三叉神経から脳に刺激が伝わって、睡眠と覚醒のメリハリをつけることに繋がっていると考えられます。
また、噛むことは記憶にも影響を及ぼすことがわかっています。
よく噛むマウスの脳では、記憶にかかわる海馬で、新たな神経細胞が生まれる神経新生が多く見られたのです。
噛むことは睡眠や覚醒のリズムに関わるだけでなく、睡眠中に強化される記憶にも深く関係しているのです。